翌日の江戸の空は青々と輝いていた。
雲ひとつない広い空から、さんさんと太陽の光が降り注ぐ。
誰もが心地の良い、爽やかな朝だった。
そしていよいよ、土方の告白に
---------- 銀時が答える時がきた。
スタッフが用意した場所は緑の美しい河原だった。
告白の夜には夜景の美しい丘だった。
やはりテレビなので、何をするにもロケーションは大切だ。
特に今回は番組の中で最も大切で盛り上がる「告白の返事」の場面であり、スタッフたちにも気合が入る。
帰国の荷物を持った土方と銀時を、向かい合わせに立たせる。
そして乗ってきたピンクのワゴンは少し離れた場所、テレビの画面の後方に映る位置に停める。
他のメンバーはその車から二人を見守る。
沖田と神楽はニヤニヤ笑いながら、お妙と九兵衛は不安そうな表情で、土方と銀時を見守った。
スタッフたちはそれぞれセッティングやら段取りやらを打ち合わせ、カメラや照明、音声のチェックをして騒がしい。
土方と銀時はそれぞれ決まった立ち位置を指示され、向かい合わせで立ちすくむ。
顔を合わせるのも気まずい状況で、長い時間そこで待たされた。
その間、二人は一言も言葉を交わさなかった。それどころか、視線すらも合わせない。
周囲の慌しさをよそに、土方と銀時の間にだけはピンと張り詰めた冷たい緊張感が壁を作っていた。
黙って突っ立っている二人の周り、少し離れた位置に大きなカメラが3台も設置された。
まるで大砲でも向けられているかのように狙われて、いい気分はしない。
そして二人の身体に隠しマイクが付けられる。
会話という会話をしっかり拾って録音するためだ。
土方は緊張しながらも、この仰々しい事態にすっかり興冷めしてしまった。
銀時に至っては一体何のためにこんな事をされるのか、見当もつかず、腹が立っていた。
スタッフの作業が終わると、いよいよ二人は「はいどうぞ」と声をかけられた。
何が「どうぞ」なのか分からないが、何か言わなければならないと思った土方が口を開く。
「昨日は・・・ちゃんと眠れたか」
肝心の答えを聞くのが恐くて、つい関係のない話題をふってしまう。
それに対して銀時の機嫌は最低最悪、冷ややかな目をしていた。
「おかげさまで全然眠れなかったけど・・・何それ、嫌味か?」
「あ、ああ、そうだな。俺も眠れなかったぜ・・・悪かった」
「・・・それで、何なの、この演出は?」
不自然に二人で向かい合わされて、他のメンバーに見守られて、しかもカメラが何台も銀時たちを囲んでいる。
告白の返事をする場面だとは思いもしない銀時は、怪訝そうに辺りを見回す。
「何って・・・まあ確かに気分良くはねえだろうが、番組なんだから仕方ないだろう」
「仕方ないって、どういうことだ?俺に何を言わせたいの?」
さっぱり要領を得ないことに、銀時が苛々とし始める。
自分を追い出そうとしている土方と話し合うなど、憎たらしさが増す。
思わず、銀時は必要以上に土方にキツくあたってしまう。
「お前の本当の気持ちを知りたい」
土方は銀時の目を見て、はっきりとそう言った。
「気持ち・・・って言われても・・・」
土方のまっすぐな視線に射抜かれ、銀時はうろたえた。
どうやら、この場にいる全員が自分の言葉を待っている、その雰囲気を銀時は感じた。
しかし何を言えばいいのか分からない。
今日でリタイアするから、みんなに別れの言葉だろうか?
それならメンバー全員がここに出てくればいいはずだ。
---------- 何故土方だけが、自分と対峙するのだろうか?
銀時は背中に汗をかきながら、近くにいる誰かに助けを求めるように、あちこちに視線を彷徨わせた。
「俺のことをどう思っているのか、好きか嫌いか・・・だ」
いつまでたっても答えようとしない銀時に溜息をつき、土方が腹をくくったようにそう言った。
その言葉を聞いた銀時は、驚きのあまり膝の力が抜ける。
危うくその場でよろめきそうになる。
「す、す、好きか・・・って!?」
自分の秘めていた気持ちは、誰にも伝えてはいなかったはずだ。
土方に抱いた恋心は、今までもこの先も、自分だけの思い出にするつもりでいた。
どうせ脈はないのだから、そう潔く諦めたのだ。
それなのに当の本人から「好きか」と問いただされるとは思いもしなかった。
しかもメンバーを始め、カメラまでもその答えを今か今かと待ち構えている。
これがどんな状況なのか銀時には理解できず、パニックに陥っていた。
「な、なんで、こんなトコでそんなコト言わなきゃならねーんだ!!」
「だから、番組だから仕方ないだろう?」
土方には、銀時が何故ここまで動揺しているのか見当もつかない。
すでに昨晩、告白はしているのだ。
ただ、周囲に注目されているのが嫌なのだろうと思った。
答えを待って、土方はじっと銀時を見つめる。
土方の真っ直ぐな視線に、銀時の焦りは最高潮に達していた。
「どうしてそんな事聞くんだよ!!俺がリタイアするから嫌がらせしてんのか!!何コレ、罰ゲーム!?」
「こういうルールなんだって言ってるだろうが。まあいい、分かった、つまりお前は嫌いなんだろう、俺を」
「え、嫌い・・・?」
土方の思いつめたような厳しい一言に、銀時はぎくりとする。
焦っていた気持ちが急速に落ち着き、冷静さを取り戻した。
土方の悲しげな瞳に縫いつけられたように視線を絡みとられ、銀時は目を細めて見つめ返す。
「はっきり言ってくれ。その方が俺も諦めがつく」
「諦め?何を諦めるんだ?」
「だから、お前のことをだ」
「俺の・・・何を?」
深刻そうな雰囲気に緊張した銀時は、声を震わせて小さな声で聞いた。
土方は次第に気分を苛立たせて、その不機嫌さは眉間に深いシワを寄せる事ですぐに表情に出てしまう。
嬉しい時は素直に表情には出せないくせに、怒っている時は顔に書いてあるかのようにすぐに分かってしまうのが土方だ。
「テメ、どこまで言わせるんだ・・・いい加減にしやがれ!」
「悪い、マジで、さっぱりわかんねえ」
困ったように口元だけでヘラヘラと笑う銀時に、土方はチッと舌打ちをした。
話の食い違いに怒りながらも、何度も自分の気持ちを伝える羽目になり照れて顔が赤くなった。
「何度告白させる気だ!昨日の俺の話、聞いてなかったのか?一緒に帰ろうってチケット渡しただろ」
「告白・・・一緒に帰る?」
「言ったろう、俺は本気だ。本気でお前を好きになった。他の誰にも渡したくねェって思ってんだよ・・・!!」
「本気で俺を好きに・・・?」
しばらくきょとんとしていた銀時だが、改めてはっきり好きだと告げられると目の前の靄が消えたように視界が明るくなる。
まさか、という思いがやっと一本の線で繋がったかのように、銀時はやっと状況を理解する事が出来た。
「だから、お前の返事を聞きたかったんだ、でもお前は・・・嫌なんだろ・・・」
振られる覚悟を決めた土方は、暗い声でぼそぼそと話しを続ける。
一方、土方の気持ちを知った銀時は、突然元気になった。
大声で土方に向かって文句を叫ぶ。
「バカかテメー!!昨日の夜、んなこと言わなかったじゃねーか!はっきり言えよ!」
「だから、チケット渡したら告白なんだろう!そういうルールなんだ!」
銀時に怒鳴られて、土方も思わず言い返す。
「全然伝わってなかったつうの!お前が俺のことスキだなんて、んなこと想像もしねーよ!分かるわけねー・・・」
威勢良く土方を叱った銀時も、次第に声が震え出す。
「好き」という言葉を口にした途端に、気持ちが大きく揺れ動いたからだ。
土方の話は理解したが、それはまだ実感として銀時の心に伝わっていなかった。
しかし、土方の様子を見ているうちに、胸が熱くなってくる。
「そうだな、俺も自分で自分が信じられない。抑えきれねーくらいに惚れるなんて、どうかしてる」
「マジでか・・・そりゃお前、どうかしてるぜ」
「まったくだ、もういい」
銀時の言葉に、土方も瞳を閉じて深い溜息をつく。
自分に呆れた様子だった。
「俺もどうかしてるんだ」
「銀時・・・?」
震える声を絞り出すように囁く銀時に、土方は閉じていた瞳を開けた。
そしてうつむいた銀時の顔を覗き込むように、首をかしげる。
「俺も・・・お前が好きだ、いつの間にか好きになってた・・・!」
うつむいて隠した顔は頬から耳まで真っ赤に染まっていた。
銀時は精一杯の力を振り絞って、土方に本当の気持ちを告げた。
「・・・銀時・・・!」
「土方ァ!」
二人が引き寄せられるように前に踏み出し、しっかりと抱き合った。
やっと二人の気持ちが重なった。
この瞬間を待っていましたとばかりに周囲を囲んだカメラが二人に寄り、抱き合う場面をあらゆる角度から撮影する。
放送を見る視聴者もこの場面を待っていた。
編集を終えてオンエアする時には、感動的なBGMやナレーションで最高潮に盛り上がる瞬間だ。
この映像で感動の涙を流す者も多くいるはずだ。
演出のトドメとして、二人の数々の思い出のシーンが挿入されることになるだろう。
初めて出会った時、その日の懐かしい日記がナレーションで読み上げられ、背景に二人の歴史が流れる。
喧嘩した時、二人協力してからくり整備をした時、祭りの夜、バスの中で肩を寄り添わせたシーン、などなど・・・。
そんな場面を流してもまだ終わらないほど長く、二人は抱き合っていた。
もちろんその場でも十分に感動的で盛り上がっている。
遠くのワゴンから見守っていた、神楽をはじめとした女子の黄色い歓声と盛大な拍手が聞こえる。
二人は抱き合いながら、視線を交わし、幸せそうに微笑んだ。
告白が成功して両想いになったら、その証としてキスをするという番組ルールがある。
当然、ワゴンの仲間たちもスタッフも、視聴者も、長い抱擁のその後を期待して待ち続けた。
幸せ一杯に満たされている銀時も、土方の腕の中で頬を染めながらそれを待った。
「・・・もう、離さねェ」
土方が力の限り、強く強く銀時を抱きしめる。
「土方・・・」
銀時もすがりつくように土方の背中をしっかりと掴む。
銀時の真っ白で柔らかな髪に顔を埋めていた土方が、ゆっくりと顔を近づける。
自然と銀時も顔を上げ、瞳を閉じる。
そのまま、どちらからともなく二人は唇を寄せ、そっと重ねた。
優しく柔らかく、そして自然な美しいキスだった。
映像的にも心情的にも美しく、画面越しでも二人の愛が伝わってくるような温かい映像が撮れた。
これで番組の「掟」は守られた。
番組の「掟」・・・ルールを作ったプロデューサーは「このルール、作って良かったな」とご満悦だ。
やはりキスをした方が盛り上がる。
二人はめでたく結ばれたし、いい映像は撮れたし、番組としても待ちに待った初のカップル誕生だ。
いいことづくめだ。
その場の全員が安心してホッと胸を撫で下ろした。
告白という一大イベントも終わったし、この場を片付けて、みんなで送別会でもしようか・・・
現場はそんな空気になっていった。
二人の熱いキスが終わったら、早く撤収作業をしよう。
そう思いながら、その場の全員が二人のキスを温かい目で見守っていた。
しかし。
どれだけ待っても、二人のキスが終わらない。
そろそろか、もういいだろう。
誰もがそう思うが、それでも終わらない。
二人の気持ちも分かる。声をかけるのもかわいそう。もう少し待ってあげよう。
かなりの時間見守っているが、まだ二人は磁石のようにピタリとくっついたままだ。
もう終わるだろ?
しかし、まだ終わらない。
終わるどころか、二人はぴくりとも動かない。
ちょ、まて・・・まだなのか・・・
一同の間で「アレおかしくね、マズくね、長すぎじゃね」という不穏な空気が漂う。
「ん・・・っ」
音声マイクを通して、銀時のうめくような、甘い吐息が漏れ聞こえる。
とてもテレビには流せないような声だ。
それを聞いた音声スタッフはギクリと身体を強張らせた。
銀時が苦しげに呼吸を乱すと、土方は重ねていた唇を離した。
その様子を見て、やっとキスが終わったと一同が安心した。
じゃあ片付けるか、とスタッフがゆっくりと動き出した。
しかし土方はまた啄ばむように何度も何度も口付ける。
それを見たスタッフたちも、ワゴンの仲間たちも驚いた。
驚き、呆れ、次第に半眼になる。
「まだやんのか・・・」
その場の全員が、心の中でそう呟いた。
何度も何度も愛しげに銀時の柔らかな唇を啄ばむ土方。
最初は緊張して体を固くしていた銀時が、次第に力を抜き、閉じていた唇が緩む。
その隙を見逃さなかった土方が、そっと自分の舌を銀時の唇の割れ目に挿入する。
「ッ・・・んぅ」
銀時が声にならない甘い音を漏らす。
一旦銀時の口腔に入り込んだ土方の舌は、どこまでも深く銀時の中を犯そうとせわしなく動いた。
全ての歯列を丁寧になぞり、逃げ惑う銀時の舌を絡めとろうと動く。
次第に唇はしゃぶられるように深く重ねられ、どちらのものともつかぬ唾液が、銀時の口の端からトロリと流れ出る。
「んん・・・っ」
銀時は甘く鼻にかかった声で小さく鳴いた。
その可愛らしく煽情的な様子に、土方の理性が飛びそうになる。
その瞬間にくらりと眩暈がして土方の動きが止まるが、その後は一層激しく銀時の舌を攻めた。
何度も角度を変えて口腔を犯しながら、土方の両腕は銀時の身体をさらに強く抱き寄せる。
銀時の股を割り自らの足を差し込んでより密着させる。
あまりの熱に無意識に逃げ出そうとして銀時は身体をそらせるが、土方はそれを許さなかった。
片腕で銀時の腰を抱き、もう片手で銀時のシャツを捲り上げる。
中に手のひらを滑り込ませ、銀時の腹や胸を撫でる。
ついに胸にある敏感な部分を手のひらで撫でられ、指で摘まれ、押し潰され、弾かれる。
途端に柔らかなその突起は小石のように固くなり土方のイタズラに応える。
「ん・・・はぁ・・・」
土方の舌に銀時の呼吸と声を奪われ、胸元に甘い快感を与えられ、銀時は初めての快感に打ち震えた。
熱くなる身体を持て余し、揺れる腰を強く引き寄せられる。
銀時は土方の背に回した手をなんども掴み直し、上半身を捻って快楽に耐えた。
激しく突き上げてくる快感に眩暈を起こしていた。
「ふっ・・・んんぅ・・・!」
銀時は抑えきれない劣情にパニックを起こし、涙ながらに何度も首を振った。
唇が塞がれているので、声を出そうとするとどうしても甘えたような鼻にかかった音になってしまう。
その声が余計に土方を、そしてそんな声を出してしてしまった銀時自身を追い込んでいく。
すぐにでも弾けてしまいたいほどに熱くなった身体を持て余し、上も下も分からないほどに混乱する。
激しく猛る下半身に集中するあまり膝の力が抜け、銀時は糸の切れたあやつり人形のように崩れ落ちそうになる。
情熱的な口付けはそのままに、土方がその身体を支えた。
そしてゆっくりと河原の芝生の上に銀時を寝かせ、土方が優しく覆い被さる。
「銀時・・・可愛いぜ」
唇から糸をひきながら、口腔を吸い尽くした土方が満足そうに耳元で囁く。
「は、あ・・・ん、土方ぁ・・・」
銀時は上気した頬を赤く染め、興奮に潤んだ瞳で土方の名を呼ぶ。
・・・好きだ。だからもっと奪ってほしい。
銀時は初めて生まれた自分の感情と欲望に、翻弄されていた。
「愛してる」
今、銀時の赤く潤んだ瞳には自分しか映っていない。
求められているのを肌で感じた土方は、満足そうに微笑んだ。
愛しい気持ちが溢れてくる。
そして再び、組み敷いた銀時の身体をきつく抱きしめた。
「どこまでやる気かしら。こんなにギャラリーがいるのに・・・忘れてるのね」
ワゴンの中でお妙が困ったように呟いた。
「ありゃもうただのケダモノでさァ」
「全く酷いな。あんなもの見せられても時間の無駄だ、もう行こう」
沖田と九兵衛が呆れて溜息をつく。
「銀ちゃん、マヨにイジメられて泣かされてるアル・・・」
「泣かされてるっていうか、喜んで鳴かされてるのよ?神楽ちゃん」
銀時のただならぬ様子を心配する神楽に、お妙がにっこりとレクチャーする。
いつまでたっても終わらないイチャつきっぷりに、最初は二人を祝福していたメンバーもドン引きしている。
スタッフは一体どこまで撮影していていいのか分からずにうろたえた。
このまま黙って見守っていては、どこまでも突き進んでしまいかねない。
これ以上撮影したら違う番組になってしまう。
というか、とても放送などできない。
仕方なく数名のスタッフで、抱き合う二人を無理やり引き剥がした。
二人を囲んでいた愛の行方を記録するためのカメラも、苛立ったカメラマンによって乱雑に片付けられてしまった。
土方と銀時だけは天にも昇るような幸せな気持ちだった。
しかしその場にいたスタッフやメンバーたちは、砂でも吐きたいほどに気分が悪かった。
何も食べてなどいないのに、全員が消化不良を起こして、何故か胃もたれしてしまった。
こうして青く広い江戸の空の下、一応めでたく、一組のカップルが誕生した。
○月×日 坂田銀時
まさかこんな結果になるなんて、人生何が起こるか分からない。
でも俺、今すごく幸せだ!
何しろ土方ってすげーカッコイイしすげー優しいしからかうと面白いしキスも上手くて最高だ。
このまま帰らないで二人だけの世界にいっちまいたいと思うけどそんなこと言ったら笑われるよな。
○月×日 土方十四郎
まさかこんな結果になるなんて、人生何が起こるか分からない。
しかし俺はなんて果報者なんだろう。
何しろ銀時は可愛いし結構気が利く、話すと楽しいしキスの時に漏らす甘い吐息は最高だ。
このまま帰らないで二人だけの世界にいっちまいたいと思うけどそんなこと言ったら笑われるよな。
最後の日記は目も当てられないほどに甘く、ナレーション担当者が読み上げる時も砂を吐く思いであったという。
二人は日本一有名な、国民公認の恥ずかしいバカップルとして名を馳せた。
周りも見えなくなるほどに、いつまでも濃厚なキスを交わしていたことはかなりの話題になった。
各メディアやインターネットの世界では、二人のツンデレバカップルぶりが話題となった。
若者たちには評判が良かったが、必要以上に濃厚な口付けはPTAなどの団体から教育上宜しくないと苦情も受けた。
その騒動で番組は芸能ニューストピックスにも上がり、知名度はハネ上がった。
動画サイトでは二人の映像が流され、番組を見ていない人にもバカップルだと認知された。
そのバカップルぶりは本人たちよりも、視聴者の方か顔が熱くなるほどだ。
番組を見た者たちの間で土方と銀時の話題になると「恥ずかしい」と言われ、彼らの名前は「恥ずかしい」の代名詞となった。
ただし、その仲睦まじさを評価する声も多く、とにかく人気があった。
本人たちはこのような事態であることは全く知らなかった。
当事者の知らないうちに、全国で二人の愛の軌跡が放送され、視聴者たちが熱烈に応援し、愛を実らせたことに喜んでいた。
もしくは、それをネタに娯楽として冷やかされていたのだった。
二人は記念すべき第一組目のカップルとなったが、その後は一組のカップルも成立することはなかった。
つまりアイノリ史上最初で最後のカップルだ。
番組のその後は酷いものであった。
大食い神楽のせいで食費だけで予算を使いきり、お妙の暴力で放送コードにひっかかり、
遅れて来た新メンバーには銀時がいなくなった憂さ晴らしに機材を壊され、番組はグダグダで成立しなくなった。
恋愛どころか、普通の旅番組ですらない。
当然ながら、間もなく番組は打ち切りとなってしまった。
番組は無惨な形で終わってしまったが、土方と銀時の愛の軌跡にはファンが残った。
ホームページやブログ、SNSなどを通じて、二人のその後を応援するコミュニティも出来た。
国民的バカップルは伝説となったのだ。
有志の追跡調査の情報によれば現代の日本に帰った二人は、同棲を始めたらしい。
さらに、早くも結婚を考えているという。
どうぞお幸せに!
終。
ノベルメニューへ戻る