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::::: どうでもいいと言い切れない :::::
#46 銀八先生のスパルタ授業 後日譚
くだらない。こんな小さな事に気を取られるなんて。たまたま目が合っただけじゃねーか。
そう否定してはみたものの、うっかりしているとつい目が追ってしまう。
俺は合ってしまった目線を誤魔化す為、慌てて先生らしく振舞う。
「えーとじゃあ次、75ページから土方読んで。」
「はい。万葉集ですね。」
大抵のヤツはつっかえつっかえになる古文の教科書を、咄嗟の指名にもかかわらず土方はすらすらと読み上げる。
ったく、顔も良い上に優等生で風紀委員って、良く出来た生徒だこと。
しかしなんだなオイ、すげぇイイ声してんなぁコイツ。
いっそ朗読CD作って売りますかァ?て思う位に聞き惚れちまう。
・ ・ ・
先日、古典の授業があまりにも普通に行われ、その上それはスパルタと言える厳しさだった。
その時の先生は糖分不足でイライラしていて、その間の記憶が無いらしい。
糖分摂取したら元のちゃらんぽらんでいーかげんな、いつもの銀八先生に戻っていた。
故に3Zの皆で、HRに決定した事。
『銀八先生の机の引き出しにはチョコレートを欠かさないようにする事。』
お陰でそれからは、先生は毎日上機嫌&いい加減な授業。3Zに平和が戻った。
…てオイ!俺等3年だろ!?いいのかこんな事で、受験確実に失敗すんだろがこれじゃあァァァ!!
しかも担任の為にチョコレート基金設立って何ソレ、どんだけェェェェェ!!
とはいえ、ニコニコつーかヘラッとしてる銀八先生は、やっぱこれでいいんだ、と思う。
俺は、癪だけど、そーいう銀八が好きなんだ。そう思う。
初めは気に障る事だらけだったけど、良くも悪くも初めっから気になる存在ではあった訳で。
自覚した時には、もう後戻りできない程、、一人の人間として銀八先生を好きになってた。
古典の授業では、色恋を詠った句も、小難しくなりがちの解釈をアッサリとエロく講釈したりする。
実のところ悶々とさせられたりしてはいるのだが、そこは風紀委員なので、真面目な態度を貫く俺。
たまに悶々としすぎてじぃっと先生を見つめちまってる事もあるが、そんな時に限って先生は指名してくる。
「えーとじゃあ次、土方。」
そんな時の先生の視線と声は、何だかひどくエロく感じる。危うく勃っちまいそうになる。
でも俺は風紀委員だからァァァ!と自分を戒め、どんな質問にもきっちり答える。
間違い答えて「うっわー、そんなのも分かんねーんですかァ。かっこ悪ぅ~」と笑われたりしないようにだ。
・・・・・何か俺って・・・よーく考えればすげーバカ?
だんだん隠せなくなってきてる想い人、相手は先生で担任でしかも男。女ならともかくだ。
在り得ないと思ってた。この俺が、こんな恋に落ちるなんて。絶対に無ぇ、と思ってた。
・ ・ ・
「毎日必ず食ってんだね、チョコ。」
「いやね、何か知んないけど、俺が買ってなくても引き出しに必ず入ってんだよ。磯村先生も食う?」
「磯村じゃなくて服部だっつーの。俺はいいよ。それ生徒からなんじゃねえの?」
「だろうなー。3Zのヤツらだと思うよ俺も。でもよォ俺そんなに慕われる覚えは無いんですけどォ。」
服部先生はくっくっと忍び笑いを漏らす。
俺ァ自分でも教師なんてガラじゃねぇっつーのは分かってんけど。
でもあんまり居心地の良くない職員室に居られるのも、服部サンのお陰。
数少ない俺のジャンプ仲間だ。
「この前のアレの所為じゃねえの?糖分不足で授業した時の記憶が無い、って言ってただろ。」
「そーいやそれ以来だなァ、チョコがあるのって。」
「よっぽどヒドい事したんじゃねー?生徒怖がってたみたいだよ。」
「まさかァ。いくら俺でも生徒に暴力はふらねーって。」
「いやいや違うって。すっげースパルタ授業だったそーじゃねーか。覚えてねぇっつーのが銀八先生らしいけどね。」
「ふーん?まァ記憶無ぇからどう言われてもピンと来ねーんだけどね。」
それより、と服部先生は話題を変えた。
「今夜ァ?給料日前じゃん、金無ぇよ俺。」
「銀八先生はいつも金無いじゃん。いーよ今日は奢ってあげるからさ。」
「何?リッチじゃん服部先生!どーしたんだよ?競馬か?パチンコか?強盗でもした?」
「何その強盗って!?俺そう見られてんの?…ピザ屋のバイト代入ったんだよ。」
「ああ 副 業 の。 学 校 に 内 緒 のね。」
「デカい声出すなって!知ってんのアンタだけなんだからさ。だから奢るって言ったんだよ。」
「そーいう事なら遠慮無くゴチになりますよォ。」
やった。晩メシはカップ麺にならずに済んだ。
「アンタいい人だよねェ、磯村先生。痔なのにさぁ。」
「痔は関係無いでしょうが!?それに俺は服部だって!誰その磯村って?」
「それってやっぱ使いすぎ?使いすぎでそうなっちゃうの?で相手は俺も知ってる奴?」
「とんでもない誤解してねえ?!俺ソッチじゃねえから!…って人の話は最後まで聞けェェェ!」
チョコ食いながら痔の話はしたかァねーので、俺は早目に3Zの教室へ向かった。
さっさと帰りのHR済ませれば、人の金で飲み食いという嬉しい夕餉が待っている。
・ ・ ・
「はぁいHR終わりィ。日直は学級日誌さっさと出しやがれ。てめえら早く帰れよォ。」
何急いでんだよ先生は。用事でもあんのか?珍しい。
そういや今日の日直俺じゃん。
日誌を書いている間に、教室から生徒は消え、俺と先生の二人だけになった。
長谷川君はバイト、桂君は何か知らねーがちょっと危なそうな活動、
女子は「今日は月に一度のケーキバイキングの日なのよ」と全員でケーキ屋へ、
近藤さんはそれを追っかけて、総悟はその後についていって。
…ったく、俺等3年だっつーの。受験生の危機感とかって無ぇのかよみんなァァァ!?
俺は心の中でブチブチ言いながらも、日誌は完璧に仕上げる。
「先生、日誌です。」
「おぅ早いじゃん。流石は多串君だねえ。」
「 ひ じ か た だっつってんだろ。」
椅子に座り日誌を見る先生の眼鏡が、夕陽に反射した。
「先生、眼鏡曇ってる。」
「あー?大丈夫、見えるから。」
「眼鏡は顔の一部じゃねーのかよ。いい加減だなあ。貸して下さい、拭きますから。」
「え?いいって。」
「いい訳ァねえだろ!俺そういうの嫌いなんだよ!」
「俺がいいっつってんだからいいんだよ。めんどくせーなァ。何だよお前かあちゃんか?」
「とにかく貸せ、」
無理矢理先生の眼鏡を奪おうと、顔を近づけた。
ふっと 甘い 香り がした。
チョコの匂い、だ。
眼鏡の奪い合いをしていた俺達は、お互いの腕を掴んでいた。
気付いたら俺は銀八先生の眼鏡じゃなく唇を奪っていた。
銀八先生は茫然と俺の顔を見ていた。
「・・・・・・・・・・何、土方、お前、」
名前を呼ばれて俺も我に返った。
ちゃんと名前を呼ばれていた事にも気付かなかった。
やっちまったよオイ とか、恥かしいとか、一瞬で色んな感情が湧き上がる。
慌てふためくだろうと自分でも予測していたのに、口から出た言葉は、思ってたよりも冷静だった。
「何で抵抗しねえんだよ?」
・ ・ ・
「・・・・・へ?」
何こいつ。「何で抵抗しない」たぁよく言うぜ。
抵抗するも何も、そんな暇無かったでしょーが。あまりにも突然だったでしょーが。
強く腕を掴まれてるし、椅子に座った俺は半ば押さえつけられてたんだから。
今だって俺の腕は解放されてねーじゃんよ。
「お前さァ、もしかして、俺の事好きなの?」
ホンの冗談だろ?というニュアンスを含めて訊いてみる。
だって男同士だよ?しかも先生と生徒よ俺ら?出来る事なら冗談で終わらせねえと。
しかし土方は真剣な顔で、更に俺を掴む力を強める。
「好きで悪いか。好きならキスしてえって思うだろ。」
あれっ、ヤバいよ、こいつマジだ。
「・・・お前、俺をいつもそーいう目で見てたの?」
少しだけ、『いやぁね土方君ったら、H!ケダモノ!』的なトゲを含ませた口調にしてみると。
「っ・・・、これは、先生が、その、甘い匂いさせてて、誘われた、っつーか」
オイオイ、本心は余裕無いって言ってるようなモンだよそれじゃあ。
やっぱコイツまだまだガキなんだなぁ。高校生だもんなぁ。青春だねえ。性春っつった方が合ってるか。
―でも。
俺はこんな土方が可愛いと思う。
、ってアレ、俺もヤバいんじゃね?
可愛いと思う ってちょっと俺ェェェ!?
土方を抱きしめて頭撫でてやりてー、とか今思ってんじゃん俺。
授業中目が合ってドキッとしたの、あれってまさか恋だったのかァァァ!?
ダメだって先生がこんな事考えちゃあ!バレたらクビだよ!?コイツも停学処分とかされちまうよ!?
それは避けねば。せめてこの場限りにしとかねーと。割り切れ俺。
・ ・ ・
きっと銀八先生は今、対面や学校にこの事がバレた時の事とか考えてんだろう。
そんなのはどうだっていい。内申書なんざどうなったっていいんだ。
俺の事を考えて欲しい ― と、強く強く思う。
「先生が何考えてんのかはどうでもいい。俺は先生が好きだ。」
こんな事しちまった以上は、と俺も腹を括る。本気で告白した。
その時、一瞬、銀八先生の顔に走った感情を、俺は見逃さなかった。
ほんの一瞬だけ、パァッと目が輝いた。でもすぐいつもの読めない、死んだ魚の目になった。
「オイオイよく考えろよォ。俺ら男同士で、先生と生徒だよ?どうしたってこれァお前、」
「先生は、俺を、嫌いか?」
口達者な銀八先生にはこれ以上喋らせない方がいい。
「生徒としてではなく、俺をどう思ってんだ?」
訊ねながら、また顔を近づけた。
先生は、今度も抵抗しなかった。
閉じられていた唇も俺の舌の侵入を拒まず、その舌も絡ませるのを拒まない。
―甘い。
先生の口の中の甘さを残さず舐め取る様に、夢中で味わった。
・ ・ ・
「甘ぇな。先生の口は。」
唇をようやく離した土方が言った。
「さっきチョコ食った所為だろ。ったく、ペロキャンみてーに舐めまわしやがって。」
「俺ァ甘いモンは好きじゃねえんだ。でも、先生は、別だ。」
ベロチュー許した事で、土方は強気になった。が。
「俺はマヨ味のキスなんて嫌だからな。出直して来いや、土方クン。」
突き放すと、いつもの冷静沈着な土方に戻りきれない。やっぱ高校生じゃまだまだ坊やだなぁと思う。
ま、しょーがねえよね。相手を読み切れねえっつーのは、坊やだからさ、仕方ねえんだよ。
「先生、俺の事、何とも思ってねえ、のか?」
「俺ァ何にも言ってねーよ。」
「だったら何で抵抗しなかったんだよ?俺を憐れんでんのか?」
弱い口調。けど目がすわってるよオイ!
ただでさえ鋭い君の目が、怖い事になってんだけど!
ちょっとイジけさせる積りだったけど、ヤベ、怒った?こいつキレると手ェつけらんねーんだよなァ。
しょうがないねぇ。オトナな先生が折れてあげますよ。
つか、本音出したら、止まんなくなっちまうだろーが。引き返せなくなんだろーが。
そこんトコ分かって欲しかったんだけどね。
余裕無いお前の可愛さに免じて、言ってやるよ。
「バーカ、いくら俺でも、憐れんだくれぇでこんな事許すか。」
土方がポカンと口を開けた、と思ったら、抱きついてきた。あーもうイジり甲斐ありすぎこいつ。
その夜は、何事もなかった様に振舞うのに疲れ、いつもより早いペースで呑んじまった。
ったくどーして俺がこんな思いしなきゃなんねーんだよ。
今のところこれ以上土方と発展しよーなんて思っちゃいねーけど、考えちゃあいけねーからだけど、
俺もキスしたかったなんて絶対言わねーけど、まいっか。
「銀八さん、今夜はペース早くねえかい?」
「あーそう?いいのいいの気にすんなって。服部先生ももっと呑みなぁ。全然減ってねーじゃん酒。」
「・・・・・・何かあった、とか?」
「・・・・・・別にィ。・・・どうでもいい事、ならあったかもなぁ。」
ホントはどうでもよくなんかねーんですけどォォォ!
服部先生のカンが良すぎるんだか、俺が顔に出しちまってんのか。それもこれも全て酒の所為か。
それすらどうでもいいと思う。・・・やっぱ呑み過ぎですかコレ?
「ま、深刻になる前に相談してよ。」
ホントいい人だねアンタ。 でも 言える事と言えない事 ってあんだよね。
「そう?じゃあ、お金、」
「金の事以外でな。」
ちっ!
::: おわり :::
公さまより3Z土銀の小説を頂きました!
ギャラリーにある私の
へぼ漫画NO.46のスパルタ銀八先生ネタ
の後日譚とのことです!
なんと恐れ多い・・・でも、どうもありがとうございます!
どれほど私が喜び、萌え悶えたかは・・・ご想像の通りだと思います。笑
公さま、素敵な作品をどうもありがとうございました!!
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