………なんだかなあ。

 すっかり安心しきってんだろうな。
 ……ったく。
 爆睡しやがって。


 寝息と共に上下する肩口を見ながら、俺は起き上がった。
 まあ疲れてんでしょうね、だいぶお疲れの模様で。
 いや、俺だって疲れたけどね。散々疲れることしましたから。今まで寝こけてましたし。
 んで、目ェ覚めたら、横にコイツが寝てて。そりゃそうなんだけどさ。

 こっち向いて、うつ伏せに寝て、なんともまあ、いつもと違った油断しきった不細工な寝顔晒しやがってて。ヨダレ垂れてんじゃね?
口開いてますけど。横の頬が枕に押し潰れて間抜けな顔になってますがどうしてくれましょうかね。


 目が覚めた時一番に、そんな寝顔目に飛び込んできて、うっかり吹き出す所だったって。吹き出したけど。

 さっきまで抱き合ってたから、お互い素っ裸なんだけど、二人分の体温だから、布団の中がちょうど良いぐらいに眠り誘う温度で。
気持ち良いから、また寝ちまおうかと思ってたんだけど。
 こいつのこんなに油断しきった顔にお目にかかる機会少ないし。

 んで、じっくり見てたら。


 ……やっぱ好きだわ。
 俺ってば、やっぱこいつの事だいぶ好きだって。
 付いてる内容物は眉毛二対に目が二つで鼻と口が一つづつで、どうせ俺と同じ機能がくっついてるだけなんだけど、良い顔してるよなあ……ってつくづく。
 寝顔見てるぐらいで、腹の底の方から、くすぐってえような笑いが込み上げてくるんだから、俺ってばだいぶコイツにいかれちまってんだろうな。情けねえって思う前に笑えてくるから重症だ。
 何だろうね、顔見てるだけで、可笑しいやら愛しいやらで。

 至近距離でこんなに顔近づけたって起きる気配すらない。
 アンタこんなんで大丈夫ですかあ?

 顔近づけて、俺の唇くっ付けられる場所は全部にキスした。鼻先とか頬っぺたとかオデコとか、まあ全部。

「……ん…」

 うるさかったのか、何やら眉ひそめたけど、それだってアンタは眠りの中ですか。良い夢見てますか? そん中に俺出てきてますか?
 起こしちまったかと思って、ちょっと慌てたけど、またすぐおんなじ体勢で眠りこけてやがる。

 本当に熟睡してんだ……。普段が普段だけに、寝顔はより一層可愛く見えますね。

 とか一人でニヤニヤしながら観察してたら、目が覚めてきた。

 ってもこんな明け方。起きるにゃ早ぇし、寝る気失せたし。

 やる事ねえから、起き上がって観察。


 あ、この前付けた痕まだ残ってるわ。
 肩口、後ろ側。

 に、付けたキスマーク。

 鏡でも無理しなきゃ見えない場所。鏡見て身嗜みチェックする習慣すら毎朝数秒の奴が気付くはずねえ場所。

 気付いたら、こいつ何て言うんだろうな。とか、考えると笑える。


 好きだ、なんて言ってやんねえけど、ちゃんとわかってますかー?
 今更、いちいち好きだとか惚れてるとか言う関係じゃねえし、そんな空気ねえし。どうせテメエだって言わねえだろうが。
 まあ、アンタの気持ちは有り難く頂戴してますよ。


 規則正しく寝息で、少し上下する肩口。に。


 俺の付けた痕に……
 指くっつけて。


 俺のだって。
 こいつ、俺のだから。
 誰にも渡さねえって。


 消えんじゃねえよ。この痕、ずっと残ってりゃ良いんだ。俺のだって証明。誰にも見せんじゃねえよ。これ知ってんの俺だけでいいんだから。

 俺だってテメエのもんなんだし。


 もっかい。
 消えねえように。

 肩、後ろっかわ。おんなじ場所にさ。


 肌を吸って、痕残して………









実さんより、サイトの引越し祝いに頂きましたー!
本来はなんと!銀桂の小説なのです。
土銀な私にも楽しめるように、実さんの絶妙な表現力で
受け銀・攻め銀 どっちでもいけちゃうすごい小説になりました。
実さんのサイトにUPされる時には、もう少し銀桂になるそうです。そちらも楽しみです!

実さん愛してます。本当にありがとうございます!




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