===高校生日記===




「土方、現国の教科書貸して!」

坂田銀時は忘れ物が多い。
忘れっぽい性格というよりも、面倒臭がりで用意していないだけなのだ。
困った時には隣のクラスにいる幼馴染が助けてくれる。
良いように使っている、ともとれる。

「またかよ!お前現国の教科書、本当に持ってんのか?」

彼と幼馴染の土方十四郎は、呆れた顔をしながら教科書を手渡す。
我侭な銀時に手を焼くフリをしながら、土方は頼られることを内心喜んでいた。

銀時に密かな想いを寄せていたからだ。

当たり前のように土方の教科書を持って行く銀時の後姿を見ながら、クラスメイトの沖田が土方をからかう。

「毎回毎回、教科書忘れるなんておかしいや。もしかして土方さんに会う口実なんじゃないですか」

「ああ?どういう意味だ」

「土方さんの事が好きなんですよ、きっと」

にやにやと笑う沖田の言葉を真に受けた土方が頬を赤らめる。

「そ、そうなのか・・・?」

「ええ、間違いありませんねィ」

都合の良い解釈をした土方は、すっかりその気になった。

銀時が「そういうつもり」で土方から物を借りに来ているのならば、同じようにすれば銀時も土方の気持ちに気付いてくれるかもしれない。
そうアドバイスをしてくれたのは、親友の近藤だった。
土方は近藤を信頼しているので、何の疑いもなく近藤の助言どおりに行動を起こした。



「ぎ、銀時、忘れ物しちまってよ・・・貸してくれねェか」

やけにぎこちない態度の土方を不思議に思いながらも、銀時は小さく笑って頷いた。

「いいけど、何を?」

土方はゴクリと生唾を飲み込んでから、言った。



「・・・リコーダーを、」



銀時は眉をひそめ静かに「気持ちわる・・・っ」と呟いた。




それ以来、銀時が土方の教科書を借りに来ることは無かった。




おわり。


20080820




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