=== 中学生日記 ===





せっかく中学生になったのだから、大人がするようなコトをしてみたい。


そう言い出したのは好奇心旺盛な銀時だった。


大胆な発言に土方は驚いたが、好きな相手の要望には応えたい。土方は銀時の誘いに乗った。






土方と銀時は幼い頃から親しくしており、今では付き合っている。

二人は何度かキスをした事がある。
唇をそっと重ねるだけなのに、どきどきして体が震えてしまうのは何故だろう。
キスをする時にぎゅっと目を瞑る銀時を、土方は可愛いと思う。


中学生になった土方と銀時は、真新しい制服に身を包み、すっかり大人になった気分でいた。
そのせいなのか、ある日キスをした後に銀時が「せっかく中学生になったのだから、大人がするようなコトをしてみたい」と言った。

それはきっと性行為のことを指すのだろう。

土方は驚きと興奮と緊張で顔が熱くなった。

経験したのは唇を重ねるキスまで。


その先の行為については朧気な知識しかなく、それも想像の域を出るものではない。



土方にとって性行為などまだ現実とは思えなかった。



しかし今、銀時が自らの制服の上着を脱ぎ捨て、白いシャツのボタンを外した半裸にも近い状態で土方を待っている。


「しないの?」


銀時が無邪気な好奇心一杯の、やけに熱っぽい視線で土方を見つめる。
真っ白な肌と見え隠れする胸元が土方を誘い、体中が熱くなる。
まだ殆ど性欲を知らない土方には強すぎる刺激だ。

生まれて初めて味わう強烈な衝動に身を任せ、土方は銀時を抱いた。



性欲に慣れない体は僅かな刺激にも耐えられず、敏感に反応する場所に触れ続けると全身が痺れ力が抜ける。
ただ手で触れただけなのに、まるで電気を流したようにその瞬間体が跳ねることが不思議でならない。

しかしそれを考察するような余裕は土方にはなかった。
銀時が聞いたこともないような切ない声を漏らすので、その異常な状態に土方は頭に血が上るほど興奮した。



初めての触れ合いは気持ちが良いものだと知った。

生まれてから今までこれほどまでに高ぶる感覚は経験した事がない。
銀時が頬を上気させ潤んだ瞳で土方を見つめ、銀時が自分の愛撫に満足し、続きを期待している。

土方は銀時の熱い視線にプレッシャーを感じ、途端に緊張する。


この続きと言っても、実は何をするべきかを知らないからだ。
しかし土方の小さなプライドがここまできて降参なんか出来るわけがないと虚勢を張る。
銀時だって土方に多くを望んでいるわけではない。互いに初めてなのは承知の上だ。

それでも土方は銀時の期待に応えたいと思った。


何とか"それらしい事"をしなくては。

焦った土方は力任せに銀時の足を開き、早急に自らを捻じ込んだ。
土方自身もかなりきつかったが、必死だった。


確か性行為とは、このような事をするはずだ。

その根拠は、土方の知識と言うより勘と本能だった。



制止する間もない突然の仕打ちに銀時は驚愕し、体中に走る激痛に呼吸が止まった。
乾いた秘部を異物によって引き裂かれ、貧血で眩暈を起こし気を失いそうだ。

その間も土方は強引に動き、銀時は痛みに悲鳴すら出なかった。

普段の銀時が嫌いな痛い注射の何倍、いや何十倍もの痛覚で、焼けるような熱さともとれる。
油汗を浮かべ気絶しかけていた銀時の意識が戻ったのは、激痛の為に溢れた涙が自らの頬を濡らした時だった。


ようやく混乱から脱却し状況を理解した銀時は、土方の暴走に気付いた。


「てめっ…いきなり入れやがって!!殺す気かバカッ!!」


涙で顔をぐちゃぐちゃに汚した銀時が、自分の上に張り付いた土方を殴って突き飛ばす。


「うわっ、何しやがる!」


「そりゃこっちの台詞だ!止めろよ!」


銀時がいかに痛かったのかを涙ながらに訴え、容赦なく手を上げた。
土方自身も無茶をした自覚がある為、銀時の抗議に言い返す事が出来ない。
最初こそ喧嘩を買ったが、銀時の苦痛を知ると言い訳も無意味で押し黙るしかなかった。

自分の暴走を申し訳なくも、恥ずかしくも思う。
今の土方は惨めな気持ちで、銀時の制裁から身を守るだけで精一杯だ。



これが原因で銀時に振られでもしたら、今後は性行為自体がトラウマになりかねない。
男としてこれほど情けないことは他にないだろう。

土方は肩を落とした。
自分には未来がないとまで思うほど、小さなプライドはボロボロに傷ついていた。



土方が童貞を捨てた時の、後悔ばかりの出来事である。





おわり。



20080831




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