===高校生日記===





高校2年生の土方十四郎には憧れの先輩がいる。
容姿のとても綺麗な、女性の先輩だ。

その人の名は坂田パー子と言い、現在高校3年生で土方よりも年上だった。
整った顔立ち、日焼けを知らない真っ白な肌、そしてその肌と同じ白くて柔らかな長い髪を、頭部の左右に結んでいる。
明るい性格のパー子は背が高く、スタイルも抜群だ。
まるで詰め物でもしているかのような豊かな胸は、パー子が動く度に重そうにゆさゆさと揺れ、その悩殺級の強い刺激に土方の股間ははちきれそうだ。


パー子と土方は昨年度の委員会が同じだった。
それをきっかけに二人は知り合い、下級生という立場で遠慮する土方に対して、パー子から積極的に話し掛けてくれた。

男友達は誰がいるのか、普段は何をして遊ぶのか、将来の夢はあるのか・・・パー子は土方のことを熱心に質問する。

いつも笑顔で、時にはメモを取ってまで、土方の話を聞いてくれた。

まるで土方を特別に想ってくれているようなパー子の態度。
会話は他愛も無い内容ばかりだが、パー子と過ごす時間は何故か土方の心が躍った。


パー子の優しい笑顔や時々見せる気だるげな仕草に年上の色気を感じ、土方はいつしか恋に落ちていた。



パー子の日常生活を土方は殆ど知らない。
好きな人はいるのか、趣味は何なのか、気になることばかりだった。

放課後、デートに誘ってもパー子はいつも忙しそうで、全く相手をしてもらえなかった。
さらにパー子はいつも疲れていて、徹夜明けで登校することもよくある。
そんな時には栄養ドリンクを差し入れると、とても喜んでくれた。

パー子は高校3年生で、大切な大学受験を控えているのだ。おそらく受験勉強に明け暮れているのだろう。

土方はパー子との距離が遠くなっていくのを感じた。

卒業したら会えなくなってしまう。

数ヶ月先の卒業式の様子を想像し、土方は焦った。

このまま諦めるなんて無理だ、我慢ならない。



−−−−− どうしてもパー子と恋人同士になりたい。



思い詰めた土方は、ついにパー子へ告白した。



「パー子さん、好きです!俺と付き合って下さい!」

顔を真っ赤にしながらまっすぐな視線でパー子を見つめ、土方は正直に気持ちを伝えた。
それまで笑顔で土方を見ていたパー子は、途端に表情を曇らせた。

「えっ・・・お前と・・・俺が?」

想像以上に不快そうな顔をされ、慌てた土方は思わず強引に詰め寄る。

「そうですけど・・・パー子さんは俺のことが嫌いなんすか?」

「嫌いじゃないよ、むしろ好きなんだけど・・・俺じゃ困る・・・」

「どういう事すか」

困惑し憤る土方に、パー子は溜息をついた。

「なあ土方、お前友達の近藤クンと付き合う気、ない?」

「は?近藤さんと付き合う・・・?イヤ、無いですけど・・・」

「チッ、面白くねーな!その方がネタになるのに!」

突然パー子が悪態をつき始めたので、土方は狼狽した。

「ネタって何なんすか!」

「土方、俺、実は・・・土方総受けなんだよ。分かるか?」

「いや、全然分からないんですけど」

「お前が近藤クンとか沖田クンと付き合ってたら・・・っていう、そういうのが萌えなんだよ」

パー子の細めた赤い瞳が怪しく光る。
土方には意味が分からなかった。冗談と捉え土方は軽く笑ったが、パー子は真剣そのものだ。

一瞬、二人の間に冷たい空気が流れた。土方は振られたのだろうか。


しかしここで諦める気にはなれない。


混乱しながらも、苦し紛れに土方が切り返す。

「じゃ、じゃあ土方×パー子さんっていうのも、たまにはどうすか!」

「何それ、新しいな。ああ、女の先輩に土方を取られて嫉妬した山崎クンが、土方を監禁するって展開?」

「どーしてそこに山崎が出てくるんすか!」

「攻めが出てこないと盛り上がらないだろーが!山崎が不満なら、誰がいい?」

熱心にネタをメモにとるパー子の姿に、土方ががっくりと肩を落とす。



こんな筈ではなかった・・・憧れの先輩が未知の世界の住人だったなんて。

しかし楽しそうに土方受けを語るパー子の笑顔は特別に可愛らしく、土方の胸を高鳴らせた。
土方は、自分の変わらない恋心気付き、腹を括った。

「俺と付き合ってくれるんなら、ネタ提供するぜ!こ・・・これでどうだァァ!!」

「乗った!ねえ、イベントでコスプレとかしてくれる?」

今まで見たことがないほどの、輝くようなとびきりのパー子の笑顔。
土方はその笑顔にキュンと顔が熱くなる反面、自分の身を犠牲にした空しさも覚えた。



まさか憧れの美女が腐女子だったなんて。



土方は意を決した。



いつかパー子のジャンルを、土方×パー子に変えてみせる。



それが自分に課せられた使命なのだ、と。






おわり。



20080825




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