※この話は、銀魂高校の逆3Zです
※銀さんは教師ではなく生徒になります。
※3Zの担任は土方さんになります
※坂田弁護士さんは、まだ一緒に生活していません;;
※銀八くんが高校生になったことに伴って、兄弟の年齢設定も下げてあります
「逆3Z&坂田兄弟」の続き?です。





逆3Z&坂田兄弟 その2





 銀魂高校三年Z組坂田銀八。
 この男には、本人そっくりな可愛らしい弟が居た。
 彼らの両親は蒸発してしまい、長男の銀八はこの可愛い弟達を養うために昼は学校へ通い、そして夜はアルバイトをして生活をしていた。
 そんな銀八は、まさかの自分の担任からストーカー被害にあっていた。
 夏休みに入ってから、毎日のようにバイト先へその姿を現すようになったのだ。
 何でも、この担任は銀八のことが好きらしい。愛する弟達を養わなければならない銀八には、誰に想われようがどうでも良い話だったのだが、毎日ストーカーのようにバイト先へ顔を出されると迷惑でしかなかった。
 そして問題の担任である土方十四郎。
 学校は夏休みで長期休暇中とはいえ、教師である土方も生徒同様毎日休みでは無いはずなのに、その姿を銀八のアルバイト先へと現した。
 はじめのうちはただ銀八がカフェのカウンターの中でコーヒーを淹れる姿を見ているだけだったのに、八月も下旬に入った時とうとう彼は行動に移したのだった。
 それまでとは変わり、とうとう銀八が居るコーヒーカウンター前の席へと座り始めたのだった。
 別にカウンターの中に入っている店員は客に声をかける必要は無い。だが、客から声を掛けられしまえば話は別なのだ。
「今日は何か疲れてるのか?バイトも6日勤目だもんな、明日は休みだろ?」
 毎日通っている上に、銀八のシフトまで調べ上げているらしい。銀八は小さくため息をつきながらも、店員として土方へと対応する。
「お客さん、詳しいですね」
 洗い終わったカップの水気を拭きながら、絶対に視線を合わせないように銀八は応えた。
「宿題は終わったのか?なんだったら少し教えてやろうか?」
 おいおい、教師が公私混同していいのかよ!
 銀八は心の中でそうツッコミを入れるが、それは態度には決して出さない。
「ありがとうございます。何とかやっていますよ」
 あくまで客と店員。
 顔面が引きつりそうになりながら、俺は当たり障りのない返事をするしかなかった。



「ねぇ坂田君、最近いつもカウンターに座るお客さんと仲いいよね?」
 バイトが終わり、帰り間際の銀八へそう声かけてきたのは、同じバイト先でも一番可愛いと言われている子だった。
 そんな可愛いという子でも、銀八にしてみれば弟の可愛らしさの方が勝ると思っているので、別に彼女に声を掛けられても何かを思うことは無かった。
「まぁ、あっちが声かけてくるから、適当に返事してるだけだけどな」
 大体、銀八にしてみれば、仲良く見られているだなんて心外以外なかった。
 しかし見ている人間にしてみれば、そうでもないのだろう。
「けどあのお客さんって、坂田君がシフト入っている時しか来ないじゃん?もしかして元々知り合いなのかな?と思って…。で、それで良かったら紹介してもらいたいなぁ〜…なんて思って…」
 彼女は両手を合わせ、そう銀八へとお願いをしてきたのだった。
 まさか、そんな風にお願いされるとも思っていなかったのだが、銀八はこれは好機だと思った。
 もし彼女と土方とが仲良くなってくれれば、今までのようなストーカーじみた行為を止めてもらえるのではないだおるかと考えたのだった。
「別に、紹介できるほど仲いいとかそんなんじゃないけど…。今度店にあいつが来た時、カウンター中と外を交換しみてみる?」
 銀八はまさに名案だと自分を褒めてやりたいと思った。
 こうして、彼は久しぶりに気分良く可愛い弟達が待つ自宅へ帰ることができるのだった。



 一日の休みを空け、夏休みも残すところあと数日となった。
 銀八がバイトへ行くと、案の定コーヒーカウンターの席に土方が居た。
 銀八は約束どおりに、一旦はカウンター内へ入ったが、すぐにウエイターとしてフロアの方へと出て、代わりに一昨日話をした子が入ったのだった。
 慣れないウエイター業だったが、忙しさに紛れながらあっという間にランチタイムも終了し、店内にも落ち着きが戻ってきた時だった。
「銀八兄ちゃん♪」
 カフェに銀八の弟たち三人がやってきたのだった。
「お前達、どうしたんだ?」
 今日来るなんて今朝自宅を出るときは何も言っていなかったのだ。
 突然の来店に驚く銀八に、三男である金時が説明してくれた。
「前からね、銀時兄ちゃんが銀八兄ちゃんってちゃんと働けているか心配しちゃってさ…。なかなかこうやって兄ちゃんの働いている所とか見れないし、夏休み中に来ようって約束してたんだ」
 銀八もこのカフェでのバイトは高校一年の頃より入っており、すでに二年以上働いているのだ。いくら何でも、まだ心配されていると複雑な気分だった。
「でね、ちゃんと夏休みの宿題が終わらないと連れて行かないって言ったから、二人とも頑張って宿題が終わったんだよ」
 金時はパー子の方にも視線を向け、二人とも頑張ったことを主張してみせた。
 銀時は居なくなった両親と学業とバイトで忙しい銀八の代わりとなり、二人の面倒をしっかりみてくれているようだった。
 そんな三人が来てくれたのだ。嬉しくないわけがないのだ。
「そっかそっか、じゃあ今日はゆっくりしていきな」
 銀八は店内でも一番日当たりも景色も良い、そして店内もゆっくり見ることができる窓際の席へと案内してやるり三人は席へつくと、おそらく来る前から決めていたのだろう。
「じゃあ、銀八兄ちゃん特製パフェでお願いします」と、そう銀時がオーダーしてきた。
 そこで、銀八は困ってしまった。
 銀八特製のパフェを作るためにはカウンターの中へと入らなければならないのだ。今そのカウンターで自分の立ち位置正面には、土方が座っているのだ。
 何とかして、今帰ってくれないだろうか?と思うのだが、彼からは帰るようなそぶりは見られなかった。
 しかし弟達の為にアイス増量した、生クリームたっぷりの特製パフェを作ってやりたい…。
 パフェを作ったらまたすぐフロアに戻ればいいだけだ。
 銀八は、自分にそう言い聞かせることにしたようだった。
 ほんの少しの時間だけの我慢と思って、普段の慣れたカウンターの中へと入るのだった。




「おい、一体どうゆうつもりだ?」
 銀八がカウンターへ入り、さっそく特製パフェを作る準備を始めた所で土方が声をかけてきた。
「はい?お客さん何がですか?」
 銀八は何のことだかそしらぬフリをして流してやった。
 今彼はそれどころではないのだ。
 目に入れても痛くないくらいに大好きで大切な弟たちへと、最高のパフェを作ってあげなければならないのだから。
「だから、何変なお膳立てしてるんだって言ってるんだよ」
 おそらく、先程までしつこいくらいに土方へと声をかけアプローチしていた子のことを言っているのだろう。
 元々目つきが悪く、ただ見られているだけでも威嚇しているように見えるというのに、更に鋭さが増し銀八を睨んだ。
 普通の人であれば、かなり萎縮してしまうのであろうが、本来よりそういったものを流すことを得意としている銀八には全く効き目は無いようだった。
「お客さんだって、俺みたいなムサイ男よりも、目の前でコーヒーの香りをさせている女の子が立って居る方いいでしょ?」
 あくまで店員としてのスタンスは崩さずに流してやった。
 これも長年勤めてきた経験というものだろう。ちょっとやそこらじゃ、動じない銀八だった。
 そんな銀八の態度に苛立ちを覚えてきたのだろが、土方は一応店内ということも考慮してくれているのだろう。声を抑えながら責めた。
「てめぇ、俺の気持ちを知っていて、この茶番はねぇだろうって話をしてるんだよ!」
 実際の所、その気持ちを知っていての茶番なのだ。あわよくば二人がくっついてくれれば気苦労が減るとさえ思っているので、土方の言葉は無視することに決めたようだった。
 銀時は冷凍庫よりバニラ、チョコ、ストロベリーのアイスを取り出し丁寧に掬ってパフェカップの中へと入れていった。
 おそらく銀八の何かしらリアクションなどを待っていたのだろうが、これ以上何を言っても無駄だと分かったのだろう。土方は少し肩の力を抜いて話題を変えてきた。
「…そんな甘いもん、美味いのか?」
 普段このカフェに来ても、コーヒーしか注文しない土方は言った。
「俺はそんな甘いもんはぜってぇに食えないな…」
 取りようによっては、独り言とも思えるようなつぶやきだったが、おそらく銀八に声をかけているのだろう。
 全く無視して流してやってもいいのだが、さすがにあまり冷たくしすぎるのも良心が痛んだのだ。
「俺の作るパフェは、かなり美味しいですよ」
 たまにこのカウンターでパフェを楽しそうに作っていると、似たようなことで声をかけてくる客が居るのだ。その客同様の返事をしてやった。むろん、営業スマイル付きでだ。
 一瞬、土方の顔が真っ赤になったのだが、銀八はパフェ作成に一生懸命でその表情を見ることは無かった。だが、その表情を金時は少し離れたテーブル席から見逃してはいなかった。



 アイスクリームなどを盛り合わせ、あらかじめ飾りやすいように切られた果物を冷蔵庫から出した所で、パフェを待ちきれなくなった金時とパー子がカウンターの方へと寄ってきた。
「銀八兄ちゃん、美味しそうだね」
 カウンターごしに銀八の手元を覗き込んだ。…悲しいことに、あまり銀八には懐いていないパー子は金時にくっついて来ただけなのだろうが。
 だがパー子もパフェには興味があるらしく、二人はカウンター席へと座るとまだ中学生らしい可愛らしい期待に満ちた笑顔で完成間近なパフェを見た。
「銀八兄ちゃん、本当にすごく美味しそうだよ!こんな沢山アイスが入ったパフェ食べるの初めてかも」
 普段メニューにあるパフェよりもアイスやフルーツを増量してあるパフェなのだ。
「そうだろ、そうだろ!兄ちゃんが今めちゃくちゃ美味いパフェを食べさせてやるからな」
 銀八は弟の可愛らしい反応に気分を良くするのだった。
 そして、仕上げのソースとかは何にしようかとか、もうちょっとチョコとか乗せるスペースあるなぁ〜とかよりボリュームのあるパフェにすべく銀八が悩んでいた時だった。
「あれ、銀八兄さんの担任さん」
 先程から気が付いていたのに、さも今存在に気が付きましたといった風に、横で大人しくコーヒーを飲んでいる土方へと声をかけた。




 弟のことになると周りが見えなくなる兄同様、兄のこととなると周りが完全に見えなくなってしまう金時だ。
 夏休みへ入る直前、道で偶然土方と会ったことを、金時はよく覚えていた。
 特に、銀八を見る目をよく覚えていた。
 そして、夏休みを利用してお妙達姉弟と坂田兄弟とで遊びに行った時、おそらく弟達には分からないだろうと思っていたのだろう。あろうことにお妙は土方の名前を出したのだった。
 金時はこのときの会話も、聞き逃すことなくしっかりと聞いていて、彼なりに土方十四郎という人間を調べておいてたのだった。
「あんた、銀八兄ちゃんのストーカーなんだって?」
 その最初の一言で、ドキっとしたのは、誰よりも被害者本人である銀八だったのかもしれない。
 声を掛けられた当人は、それなりにストーカーをしているという自覚があるのか、金時の質問に黙秘することにしたのだろうか?
 何も応えなかった。
「大体高校教師が生徒に、それも男子高生に手なんか出しちゃっていいわけ?」
 金時は別段気にすることなく、もっともな意見で続けた。
「き、金時…!」
 平常心で居られないのは、銀八の方だ。
 慌てて会話の間に入ろうとするが、金時の方は銀八に有無を言わせない迫力で、土方へと向いている。
「こないだの登校日だって、学校サボったらいしじゃん。もしかして、学校サボってここに来てたとかじゃないですよね、土方先生」
 金時の情報源は一体どこなのだろうか?生徒でさえ知らないようなことでさえ、口にした。
「それも、土方先生が苦手な坂本先生が代行で登校日はクラスに出てくれたらしいね。あんた、嫌いな人に貸しを作ってまで学校サボって生徒の所に来ちゃ駄目でしょ」
 全て本当なのだろう。土方は何も言わずにポーカーフェイスを貫き通そうとしているが、時折コメカミがピクリと反応した。
 どこをどう調べれば、ここまでの内情を知ることができるのだろうか?
 金時の言葉を黙って聞いていた、銀八までが弟が怖いと思ってしまった瞬間だった。



 実のところ、このカフェへ来ることは以前より楽しみにしていたのだ。だが、そのカフェに土方が来ていることを知った金八はあらゆるバックボーンを駆使し、今日までの間で出来る限り調べ上げていた。
 敵から銀八を守るのに、敵を全く知らないということは危険だということを知っていたからだった。
 そして、今回の第一ラウンドの土方をノックアウトするには十分の言葉を送ってやった。
「あんた、初めて担任受け持ったんだろ?いきなり生徒に手出すとかのスキャンダルはヤバイんじゃない?」
 まかりなりにも聖職者として、いけないとわかっていたのだが我慢できずに夏休みの間全く銀八の姿を見ることができないなんてと思って、つい暴走してしまったのだ。
 土方自身にも自覚があったからこその、ストレートパンチだった。
 そのカウンターテーブルに置かれている伝票を握ると、土方は無言のままにレジで会計を済ませて店を出ていくのだった。
 完全に土方が店を出たことを確認して、金時はカウンターの中で呆然としている兄へと心配そうに声をかけるのだった。
「あんなのが担任だなんて、九月からまた学校に通わせるのが心配だよ…」
 そう、銀八は弟に言われてしまうのだった。


 そして残りの夏休みの間、土方は銀八のアルバイト先へ姿を現すことは無かった…。
 仮に土方が来たとしても、この日から毎日銀時か金時とが順番に店へと顔を出すようになったので、土方としても姿を現すことはできなかっただろうが…。
 だがこれで土方が銀八を諦めたということでは無かった。
 銀八に意識をしてもらうためにはまず弟達に勝たなければならないということを思い知らされ、これからの繰り広げられるバトルのための準備に入っていただけにすぎなかったのだった。




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